社会とデザインの実践論

デザイナーに伝わる!NPO広報担当者のためのデザイン依頼ブリーフ作成ガイド

Tags: デザイン依頼, ブリーフ, デザイナー連携, NPO広報, コミュニケーション

はじめに:なぜデザイン依頼に「ブリーフ」が必要なのか

デザインを外部のデザイナーに依頼する際、「ブリーフ」と呼ばれる資料を作成することは、プロジェクトの成否を大きく左右します。ブリーフは、依頼の背景、目的、希望する成果物、ターゲット、予算、スケジュールなど、デザイナーが制作を進める上で必要な全ての情報を体系的にまとめたものです。

特にデザインの専門知識がないNPOの広報担当者の方にとって、デザイナーとのコミュニケーションは時に難しく感じられるかもしれません。「イメージ通りにならなかった」「何度修正しても意図が伝わらない」といった経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

これらの課題の多くは、依頼段階での情報共有の不足、つまりブリーフが十分に機能していないことに起因することが少なくありません。適切なブリーフを作成し共有することで、デザイナーは団体の活動や目的を深く理解し、より効果的なデザイン提案が可能になります。これは、限られた予算と時間の中で最大の効果を得るためにも非常に重要です。

この記事では、NPOの広報担当者が「デザイナーに伝わる」ブリーフを作成するための具体的なステップと、含めるべき必須項目、それぞれの書き方のポイントを解説します。

ブリーフに含めるべき必須項目とそのポイント

効果的なブリーフを作成するためには、以下の項目を網羅し、可能な限り具体的に記述することが重要です。デザイナーはこれらの情報をもとに、団体の課題解決に貢献するデザインを考えます。

1. プロジェクトの背景と目的

2. ターゲット(誰に伝えたいか)

3. プロジェクトのメッセージ(何を伝えたいか)

4. 希望するアウトプット(何を制作してほしいか)

5. 団体の情報とトンマナ(トーン&マナー)

6. 予算とスケジュール

7. その他(特記事項、参考資料など)

ブリーフ作成のステップと活用のヒント

ブリーフは一度作って終わりではありません。以下のステップで作成し、デザイナーとのコミュニケーションに活用しましょう。

  1. 内部での情報整理: 依頼する前に、関係者間でプロジェクトの目的、ターゲット、メッセージ、予算、スケジュールなどの認識を合わせます。ここが曖昧だと、デザイナーに伝える情報もブレてしまいます。
  2. ブリーフの記述: 上記の必須項目に沿って、整理した情報を記述していきます。専門用語を使わず、分かりやすい言葉で記述することを心がけます。
  3. 補足資料の準備: 団体の資料、既存の広報物、ロゴデータ、使用可能な写真やテキスト原稿などを整理し、ブリーフと合わせて提供できるように準備します。
  4. デザイナーとの共有と説明: 作成したブリーフをデザイナーに共有し、可能であればブリーフの内容について直接説明する機会(オリエンテーション)を設けます。口頭での補足や、デザイナーからの質問に答えることで、より深い理解を得られます。
  5. 質疑応答と確認: デザイナーからの質問に丁寧に答えます。ブリーフの内容について認識のズレがないかを確認し、必要であればブリーフを修正・加筆します。
  6. デザイン制作の開始: ブリーフの内容に合意できたら、デザイナーは制作を開始します。ブリーフは、その後のデザインチェックやフィードバックの基準としても活用できます。

まとめ:良いブリーフが、良いデザインへの第一歩

デザイン知識がないからといって、デザイン依頼を難しく考える必要はありません。最も重要なのは、「何を」「誰に」「なぜ伝えたいのか」という、団体の活動の核にある想いや目的を、デザイナーに正確に、そして丁寧に伝えることです。

ブリーフ作成は、単なる事務作業ではなく、プロジェクトの成功確率を高めるための重要な準備です。少し時間をかけてでも、明確で具体的なブリーフを作成することで、デザイナーとの信頼関係が築かれ、団体の目的達成に貢献する質の高いデザインが生まれる可能性が高まります。

今回ご紹介した項目を参考に、ぜひ貴団体のデザイン依頼に役立つブリーフ作成に挑戦してみてください。明確な情報共有は、デザイナーを単なる作業者としてではなく、団体の課題をデザインの力で共に解決するパートナーとして巻き込むための第一歩となるでしょう。