NPO広報担当者のための、伝わるウェブサイトデザインの基本とデザイナーへの依頼方法
NPOにとって「伝わる」ウェブサイトの重要性
NPOの活動において、ウェブサイトは単なる情報公開の場を超え、社会との重要な接点となります。活動内容を広く周知し、共感を呼び、支援者やボランティアを募り、寄付を募る上で、ウェブサイトは中心的な役割を担います。しかし、デザインに関する専門知識がない場合、どのようにすれば「伝わる」ウェブサイトを構築できるのか、デザイナーにどのように依頼すれば良いのか、迷うことも多いかもしれません。
この記事では、デザインの専門知識がないNPO広報担当者の方に向けて、活動を効果的に伝えるためのウェブサイトデザインの基本的な考え方と、外部のデザイナーに依頼する際の具体的なポイントを解説します。ウェブサイトのデザインが、団体の目的達成のための強力なツールであることを理解し、実践に繋げるためのヒントを提供します。
なぜNPOに「伝わる」ウェブサイトが必要か
NPOのウェブサイトは、訪問者に対して以下のような目的を達成する必要があります。
- 活動への理解促進: 団体のミッション、ビジョン、具体的な活動内容を分かりやすく伝える。
- 信頼性の構築: 透明性の高い情報公開を通じて、団体の信頼性を高める。
- 共感の醸成: ストーリーテリングなどを通じて、活動への共感を生み出す。
- 行動の促進: 寄付、ボランティア参加、署名など、訪問者に具体的な行動を促す。
これらの目的を達成するためには、単に情報を羅列するだけでなく、情報を整理し、目的を意識して構成された「伝わる」デザインが不可欠です。伝わるデザインとは、見た目の美しさだけでなく、訪問者が知りたい情報に迷わず辿り着け、意図した行動を取りやすいように設計されていることを指します。
ウェブサイトデザインの基本(非デザイナー向け)
ウェブサイトデザインにおいて、特に非デザイナーの方が理解しておくと役立つ基本的な考え方をご紹介します。
1. 情報設計の重要性
デザインの前に最も重要なのが、ウェブサイトに掲載する情報をどのように整理し、構成するかという「情報設計」です。伝わるデザインは情報整理から始まります。訪問者がどのような情報を求めているかを想定し、ウェブサイト全体の構成(サイトマップ)や、各ページの構成を論理的に設計する必要があります。
- ターゲットユーザーの明確化: 誰に伝えたい情報なのか(寄付者候補、ボランティア希望者、メディア関係者、活動地域住民など)を具体的に設定します。
- サイトの目的設定: ウェブサイト全体として、または各ページで、訪問者にどのような行動を取ってほしいのか(活動を知ってほしい、寄付をしてほしい、説明会に来てほしいなど)を明確にします。
- 必要な情報の洗い出しと整理: 目的達成のために必要な情報をすべてリストアップし、それらを分かりやすいカテゴリーに分類します。
- 導線の設計: 訪問者が目的の情報に迷わず辿り着けるよう、トップページからのナビゲーションや、ページ間のリンク構造を設計します。
2. 分かりやすさと使いやすさ(ユーザビリティ)
デザインは、見た目の印象だけでなく、サイトの使いやすさに大きく影響します。
- シンプルなレイアウトとナビゲーション: 情報が整理され、どこに何があるか一目で分かるようなシンプルなレイアウトを心がけます。主要なメニュー項目は少なく、明確に設定します。
- 読みやすさの配慮: ウェブサイト上でテキストを読む際の読みやすさは非常に重要です。適切なフォントの選択、文字サイズ、行間、コントラスト(背景色と文字色の差)に配慮することで、長文でもストレスなく読めるようになります。
- モバイルフレンドリー: スマートフォンやタブレットからのアクセスが増加しているため、様々なデバイスで表示が崩れず、操作しやすいレスポンシブデザインは必須です。
- アクセシビリティ: 高齢者や障がいのある方を含む、多様な人々が情報にアクセスできるよう配慮することも重要です。文字サイズの変更機能、キーボード操作への対応、代替テキストの設定などが含まれます。
3. 信頼性を高めるデザイン要素
ウェブサイトのデザインは、団体の信頼性にも影響を与えます。
- トンマナ(トーン&マナー)の統一: ウェブサイト全体でデザインの方向性(色使い、フォント、写真のスタイルなど)を統一することで、一貫性のある印象を与え、団体のブランドイメージを確立します。ロゴや既存の広報物との整合性も重要です。
- プロフェッショナルな印象: 洗練された、あるいは活動内容にふさわしいデザインは、団体の真剣さや専門性を伝え、信頼感を醸成します。
デザイナーへの効果的な依頼方法
外部のデザイナーにウェブサイトデザインを依頼する際は、いくつかのポイントを押さえることで、よりスムーズに、そして期待通りの成果を得やすくなります。
1. 事前の準備を徹底する
「こんな感じ」といった曖昧な要望では、デザイナーも具体的に動けません。依頼する前に、以下の点をできる限り明確にしておきましょう。
- ウェブサイトの目的: このウェブサイトを通じて何を達成したいのか(例: 年間寄付額を〇〇円増やす、〇〇人のボランティアを募るなど)を具体的に設定します。
- ターゲットユーザー: ウェブサイトの主な訪問者は誰か。彼らはどのような情報を求めているか、どのような課題を持っているかを深く理解します。
- 必要なコンテンツ: ウェブサイトに掲載すべきすべての情報(団体の概要、活動内容、ニュース、寄付ページ、お問い合わせ先、プライバシーポリシーなど)をリストアップし、可能であればテキストや写真などの素材を準備します。
- 参考事例: デザインの雰囲気や構成について、参考にしたい他のNPOや企業のウェブサイトをいくつか提示します。良い点、悪い点、なぜそれを参考にしたのかを具体的に伝えます。
- 予算とスケジュール: 予算の上限と、いつまでにウェブサイトが必要かというスケジュールを明確に伝えます。現実的な予算とスケジュールを設定することが重要です。
- 期待する成果物: ウェブサイト全体のデザインだけでなく、納品形式(デザインデータ、HTML/CSSファイル、WordPressテーマなど)についても確認しておきます。
2. 適切なデザイナーを選ぶ
デザイナー選びはプロジェクトの成功を左右します。
- 実績と専門性: NPOや非営利分野での実績があるか、あるいはウェブサイトデザインの専門性を持っているかを確認します。ポートフォリオを見せてもらい、過去の制作物を評価します。
- コミュニケーションスタイル: 丁寧で分かりやすいコミュニケーションが取れるか、こちらの意図を正確に汲み取ろうとしてくれるかを見極めることも重要です。
- 相見積もりと提案内容の比較: 複数のデザイナーから見積もりを取り、料金だけでなく、提案内容(どのようなプロセスで進めるか、どのような点に注力するかなど)を比較検討します。安さだけで決めず、質の高い提案を選びましょう。
3. コミュニケーションを密にする
プロジェクトが始まったら、デザイナーとの密なコミュニケーションを心がけます。
- 意図を明確に伝える: デザイン案に対してフィードバックする際は、「なんとなく違う」ではなく、「この部分の情報が探しにくい」「このデザインだと活動の緊急性が伝わりにくい」など、具体的な理由や、それが目的達成にどう影響するかを伝えます。
- 質問を歓迎する: デザイナーからの質問には丁寧に答え、不明点があれば遠慮なく質問します。
- 進捗状況の確認: 定期的に進捗状況を確認し、認識のずれがないかを確認します。
ウェブサイト公開後も継続するために
ウェブサイトは公開して終わりではありません。
- 効果測定: アクセス解析ツール(Google Analyticsなど)を活用し、どのような情報がよく見られているか、どこから訪問者が来ているか、目的の行動(寄付や問い合わせなど)に繋がっているかなどを分析します。この分析結果を基に、サイトの改善点を見つけます。
- コンテンツの更新: 活動の進捗や新しい情報を定期的に更新することで、訪問者は常に最新の情報を得ることができ、サイトの価値が高まります。
まとめ
NPOのウェブサイトは、活動を社会に伝え、共感を広げ、目的を達成するための非常に強力なツールです。デザイン知識がない広報担当者の方でも、ウェブサイトデザインの基本的な考え方を理解し、情報設計をしっかり行い、そして外部のデザイナーと効果的に連携することで、伝わるウェブサイトを構築することは十分に可能です。
事前の準備を丁寧に行い、デザイナーとのコミュニケーションを大切にしながら、ぜひ貴団体の活動がさらに広く、深く伝わるウェブサイトを実現してください。ウェブサイトが、より多くの人々と活動を繋ぐ架け橋となることを願っております。